番外:MTB

番外:MTB

 元々<いぬふぐり>はMTB のチームで主力はクロスカントリーであった。触れていなかったがクロカンやダウンヒルではチームの青少年達が活躍しているし会長もタマさんも上位入賞経験がある。そんなわけで「一度位はコテパンもあの爽快さを味わえ。ほんとに苦しいけど。」と会長に無理強いされて翌週シマノ・リエックスという、4日間に渡るMTBの大会の2日目、クロカン・レースのシニア・クラスに出ることになった。会長の本心は「爽快さ」云々よりも「マウンテンなら早川に負けるわけがない」という所にあるのは明白で、その通りの放言をタマさんと飲むたびに繰り返していたらしい。
 まあ俺もいつかは走ってみたいと昨秋にモデルチェンジのため格安になったMONGOOSEの、フロント・サスにROCK SHOX INDY XCが付いたやつを買ってはあったのだ。11~12月にかけ3回ばかり狭山湖周辺の林道を走ったがその度にドロドロになるので洗車が面倒臭く、やがてマフェトン・トレーニング期に突入してしまったので全然乗っていなかった。6月に玉川サイクルに部品を取りに行くのに気分転換にこいつで出かけたら、現れた会長に「せっかく丈夫な自転車できたんだ、飲むしかないだろう」と言われ結局泥酔。帰路、黒目川自転車道というのを走っていてなぜだか自転車ごと前転した。
 一体どういう態勢だったのか、左肘をズルムケにしたうえ右肘、右膝、左腰にも酷い打撲で自転車のほうも左右のバーエンドの上側、すなわちこの自転車の一番上の部分がひどくすれて削れておりサンマルコのサドルもサイドが裂けてしまった。つまり、どうもMTBに関しては会長の陰謀のニオイがぷ~んとするのだ。しかしひるむわけにはいかん。7月19日、長野・小海町の会場に意を決し乗り込む。コースはスキー場のゲレンデと周辺の林、小川で構成されている4.4kmを2周。まずゲレンデの下から蛇行しつつ上を目指す。途中一旦フラットなところがあり、いぬふぐりの少年達がいて15位だと教えてくれる。そこから急な上りになり2人抜く。上り切って右にターンして今度は外側の林の中の細いダートを下るのだが、バイクは跳ねまくるしラインを選ぼうにもどんどんスピードが上がってしまうからついブレーキを使い何人にも抜かれる。最後にタイヤ幅
しかない大石の間を垂直に飛び下りるかのような所を下る。もう、トホホである。人が見ていなかったらバイクを先に落とし尻餅をつきながらズリズリ下りるところだ。ここからフラット・ダートでゲレンデの一番下へ。ここまでで1周かと思ったら細い砂利道を下って真っ暗な森に突入。ひどいでこぼこ、丸太を3本合わせた橋やら小川を突っ切る箇所やら全く乗れないガレ場などが待ち受ける。しかも幅がないから後ろから迫られてもそうそう譲れない。どうしようもないズルズルの所を押して走っているともう吐きそうでコース脇で休みたくなるがそんなわけにもいかん。後ろからも駆けて来る。前のやつが飛び乗って走り出した地点で俺もそうするが結局動けずまた押し走りに戻すこともしばしば。こんな所をもう一度走るのかとゼツボウする。しかしやっと森を出ると舗装の急坂で、ロード野郎としてはこっちの方がはるかに楽だ。2人抜く。そしてゲレンデに戻りスタート地点を越え2周目。1周目はフロントはセンターギアで済んだこの上りももうインナーにしないとダメだ。何人か抜いたとは思うのだが、下りでは1周目よりデコボコが身体に響いて遅くなりどんどん抜かれる。森の中でもラインミスから降りざるを得なくなること多し。舗装の上りで1人、スタート地点先ゲレンデ中程のゴールラインまでの上りでもう1人抜いてフィニッシュ。先にゴールしていたタマさんが頭から水をかけてくれる。完走29名、39分22秒の21位。タマさん34分25秒、8位。会長は42分37秒、26位。MTBでもこんなことになるなんて、会長、ずっとト
モダチでいてくらさいね。しかしあんなことをビュンビュン下れるやつなんて、オッカシイんじゃないの、人間として。